信用取引のコスト
信用取引には、特有の費用がかかります。この費用は買い方と売り方で異なっています。信用取引の採算を見る場合に、現物取引との違いにも注意が必要です。
買 い 方 | 売 り 方 | |
費用 | ◇委託手数料 | ◇委託手数料 |
◇日歩 2%前後 | 逆日歩 1株あたり0.05~0.1円(貸株残高>融資残高) | |
◇貸株料 1.15% | ||
管理費 1株あたり0.1円(最低100円、最高1,000円) | 管理費 1株あたり0.1円(最低100円、最高1,000円) | |
配当金調整額(20%税引き後)支払 | ||
名義書換料(1単元あたり50円) | 株式分割新株引受(売建単価引下げで調整) | |
◇決済益に申告分離課税(決済益の10%) | ◇決済益に申告分離課税(決済益の10%) | |
◇消費税(委託手数料、名義書換料の5%) | ◇消費税(委託手数料の5%) | |
収入 | 逆日歩(貸株残高>融資残高) | ◇日歩 0.0% |
配当金調整額(20%税引き後)受取 | ||
株式分割新株引受(買建単価引下げで還元) | ||
◇決済益(値上がりした場合) | ◇決済益(値下がりした場合) |
(注)◇:必ずかかる費用・収入
委託手数料
- 新規に買付または売却した場合に証券会社の定める委託手数料が必要です。
また、弁済の場合の反対売買の際にも同様の手数料が必要です。なお、現引(品受け)、現渡(品渡し)による弁済については売買の委託がないため手数料は必要ありません。
日歩(金利)
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信用取引では、買方は買付資金の融資を受けているため融資額に対し金利(年利)を支払うことになります。
逆に売方は売付株券を借り売却代金を預けているため、金利を受け取ることができます。現在は超低金利のため売方金利は0.00%になっています。
- 【日歩の計算式】
日歩=新規建約定代金(買付 or 空売り代金)×日歩(買・売方金利)/100×日数/365
※日数は新規建受渡日(買付 or 空売り日の3営業日後)から返済受渡日(反対売買日の3営業日後)まで両端入れによって算出します。
逆日歩(品貸料)
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信用取引の買方に対しての買付資金の融資および売方に対しての売却株券の貸株には、多額の資金や大量の株券が必要なため、証券会社ではすべて自社で調達するのは不可能であり、自社で調達できない分は証券金融会社から調達する事になります。
通常、信用取引では売方に対する貸株より買方に対する融資が上回っており、証券金融会社においても同じような状況です。この場合、証券金融会社では買方から預かっている買付株券を売方に無料で貸し付けています。
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しかし、株価の動向により売方が買方を上回ると証券金融会社が買方から預かっている株券では売方に貸し付けるのに不足してしまいます。
こうなると、証券金融会社では不足分の株券を外部から調達してこなければなりません。この調達先は、貸し株に余裕のある証券会社や、保険会社、銀行などですが、外部から株券を調達する場合には、株券の貸し手に対し品貸料(借り賃)を支払わなければなりません。
この、品貸料のことを逆日歩といいます。逆日歩は銘柄ごとに株券の不足の状況や株価によって毎日変わり「1株につきxx銭」といった形で公表されます。
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逆日歩は売方全員から徴収し、買方を含む株券の貸し手全員に支払うことになります。逆日歩は何日も続くと、日歩(金利)とは比較にならないほどの金額になることがあります。
- 【逆日歩の計算式】
逆日歩=新規建受渡日(空売り日の3営業日後)から返済受渡日(買戻し日の3営業日後)の前日までの期間の逆日歩(品貸料)の累計×売建株数
貸株料
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金融庁の「信用取引における買い方と売り方のコスト負担の適正化を図る」という主旨にもとづき、平成14年5月7日約定分より証券金融会社が貸株利用証券会社に対して貸株料を徴収することになりました。
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売り方から、売建金額に対し一定の料率(証券金融会社が徴収する貸株料年率0.4%に、0.75%上乗せして、年率1.15%とする証券会社が多い)を乗じた額を日々徴収するもので品貸料とは違います。
貸株料は、売り方が負担する品貸料(逆日歩)とは異なり、買い方が受け取るものではありません。
- 【貸株料の計算式】
貸株料=新規建約定金額(空売り代金)×貸株料率/100×日数/365
※日数は新規建受渡日(空売り日の3営業日後)から決済受渡日(買戻し日の3営業日後)まで両端入れによって算出します。
管理費
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信用取引により買付(または売却)した場合、約定日から起算して1ヶ月目ごとの時点で買建玉(または売建玉)を有していた場合、買付株数(または売付株数)1株につき10銭(最低100円、最高1,000円)の管理費が必要です。
1ヶ月以内に決済をした場合にはかかりません。
配当金調整額
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信用取引で信用売りを行っている人は、配当金調整額を支払い、信用取引で信用買いを行っている人は、配当金調整額を受取ることになります。
配当金調整額は権利落ち後約3ヶ月前後で、税引き (20%、ただし2003年は10%) 後金額の入出金手続きが行われます。
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特定口座の源泉徴収口座を利用してる場合は、、配当金調整額を受取ると税引き後の配当金調整額は譲渡益となりますので、さらに10%(所得税7%、住民税3%)の申告分離課税が課税されます。
名義書換料(権利処理手数料)
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信用取引により買付した場合で、決算期末または増資割当日を越えて建玉を有している場合、株券を所有している証券会社では権利を取得するために名義書換の手続きをします。
この、費用として1単元あたり50円の名義書換料が必要です。
新株引受に対する費用負担
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信用取引を行っている投資家は新株引受権を放棄します。この放棄された新株引受権は証券金融会社が入札を行い、その落札結果(権利処理価格といい権利落ち日の夕方決まる)で売り・買いの単価調整が行われます。
権利落ち日以降は、権利落ち前の単価から証券金融会社の定める権利処理価格を差し引いたものを修正後の単価として売り方、買い方とも調整されます。
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分割株の人気が高く、理論価格より高い権利処理価格がついた場合、その差額(権利処理価格-理論価格)分買い方は得をし、売り方は損をすることになります。
税金(申告分離課税)
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信用取引の反対売買により弁済した場合は、個々の建玉の決済益に対し平成15年1月1日から平成19年12月31日までは10%(所得税7%、住民税3%)の申告分離課税が課税されます。
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現引(品受け)した場合、現引の払込価格をもって取得価額とします。現引後は現物株式となるため、売却する場合は現物株式としての税率が適用されます。
現渡(品渡し)により弁済した場合は現物株式としての税率が適用されます。
消費税
- 委託手数料に対して5%が必要です。これは現物取引と同じですが、信用取引では権利処理手数料に対しても5%の消費税が必要です。
信用取引の仕組みとリスクについてはこちらをご覧ください。
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